香港現地法人として再出発
世界最大の金融グループ・シティグループCitigroupの香港支店として親しまれてきたシティバンク香港。2005年7月1日よりリテールバンク部門がシティグループの香港現地法人Citibank(Hong Kong)Limitedに委譲され、ローカルバンクの一員となった。米系の金融機関らしく、同意書や提出書類が多く、セキュリティにも厳しい。
購入できる投資商品やインターネットバンキングのシステムは日本のシティバンクと似ているので、利用者には馴染みやすいだろう。
IPBなら郵送でも口座開設可
通常の支店窓口のほかに、香港非居住者にサービスを提供する「Inter-national Personal Banking(IPB)」セクションがある。数年前まではIPB内に日本人担当チームがあり、日本語を話す香港人が数人常駐していた。現在ジャパンデスクは置かれていないが、日本語を話すスタッフが若干名いて対応している。
シティバンク香港に口座を開く目的をきちんと説明でき、英語でコミュニケーションが取れるのであれば、香港内の支店窓口でも口座開設は可能。ただし、海外居住者向けのサービスは期待できない。
IPBで開設しても口座の条件は変わらない。口座開設手続きは香港のIPBオフィスを訪れるか、ネットから口座開設申込書をダウンロードし、必要書類とともに郵送する。香港での手続きは事前に予約のこと。
郵送の場合もパスポートコピーの認証は必要ないが、シティバンク香港が認める日本の金融機関(シティバンク銀行、三菱東京UFJ銀行など主要都市銀行)の残高証明書(発行30日以内)を提出し、初回の預金額はその口座から送金しなければならない。また、郵送では投資口座は開設できない。
総合口座でマルチカレンシー預金&投資が可能
シティバンク香港の口座はHSBC香港とよく似ており、保有しているすべての口座を1つのステイトメントで管理できる(ただし口座番号は別々に付く)。サービスや最低預金額の違いによって「Citibanking」と上位の「Citigold」に分けられる(CitigoldはHSBC Premierとほぼ同レベルの口座)。
通常は、香港ドルおよび米ドル普通預金口座Statement Savings Account、カレンシーマネジャーCurrency Manager(15通貨のマルチカレンシー口座、下表参照)、香港ドルまたは米ドル当座預金口座Checking Accountを開設する。このほか為替オプションを組み込んだ仕組み預金「プレミアムデポジットPremium Deposit」(最低預金額1万米ドル)も投資口座なしで利用できる。
基本通貨は香港ドル。発行されるATMカードは香港ドル普通預金および当座預金にのみリンクする。小切手帳は香港ドルのほか米ドルも選択できるが、米ドル小切手も香港決済なので米国内での支払いには不向き。香港内のファンド会社で米ドル建てファンドを購入する際などに利用する。
投資商品は多彩。米国株取引も可能
香港まで足を運んで投資口座を開設すれば、多彩な投資商品を利用できる。インターネットでは、香港株や米国株、FXマージン(外貨証拠金取引)、IPO投資が可能。
ミューチュアルファンドや債券は電話取引のみ。興味があれば、投資口座開設時にその場で相談して購入するといい。
プレミアムデポジットやFXマージンなどは、取引をスタートする前に別途同意書の提出が必要になる。
円の入出金にはひと工夫が必要
IPBは事務オフィスなので、基本的に現金や小切手の取扱いはできない。入金は電信送金か、香港内の支店窓口やATMで行なう(郵送で口座を開設した場合は初回の入金は電信送金のみ)。
支店の窓口では、香港ドルおよび米ドルしか取り扱えないので、円を持ち込んでもそのまま入金することはできない。円を両替して香港ドルや米ドル口座に入金するのであれば、HSBC香港やハンセン銀行、香港内の両替商などを利用する(シティバンク香港での米ドル現金の入出金は0.25%の手数料が発生する)。
ネット送金は事前送金登録を
シティバンク香港のインターネットバンキングはかなり規制が厳しい。
香港内金融機関への送金は、シティ側で提供している「Bill Payment(請求書払い)」の「Payee List」に登録されている金融機関以外は、事前に登録した口座宛てのみ。登録はインターネット上から行ない、SMS(ショートメッセージサービス)で送られるワンタイムパスワードで本人確認する(SMSが受け取れる携帯電話がないと登録できない)。本書で紹介しているBOOM証券とKGI証券はリストに入っていないので、個々に送金先登録をする必要がある。
香港内送金の限度額は最高20万香港ドルで、登録時に自分で設定する(Bill Payment の場合5万香港ドル)。
香港外送金の送金限度額は5万米ドル相当額。さらに高額の送金をしたい場合はテレフォンバンキングを利用するか、送金フォーム「Application for Payment Order」を郵送する。事前送金先登録は書類のみで、インターネット上から書類をダウンロードし、記入後オリジナルを返送する。
5万香港ドル相当額までなら事前登録なしで送金できるが、その場合、ネットで送金指示を出した後に本人確認の電話が入る。
シティバンク銀行との組合せは特典がいっぱい
シティバンク香港を利用するのあれば、日本のシティバンク銀行の口座とぜひ組み合わせたい。シティバンク香港の円口座に入金する場合、シティバンク銀行から円で送金するのがもっとも効率的。シティバンク銀行の円口座にある資金をそのまま海外の円口座に送金する場合、他の銀行では2,500円程度かかるリフティングチャージが不要のうえ、前々月の口座残高が100万円以上あれば、3,500円のインターネットでの送金手数料が2,000円と格安になる(シティゴールド口座なら無料)。
香港の窓口で米ドルを入金するなら、シティバンクの米ドルトラベラーズチェック(TC)がおススメ。シティバンク銀行に口座があればTCの発行手数料は無料で、シティバンク香港側での受取手数料もかからない。
シティバンク銀行の口座はシティバンク香港で口座を開く際の第二身分証明書にもなるので、まず日本で口座を開設してから香港の口座開設へ、というのが賢い方法だ。