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海外投資実践マニュアル(7) 

アメリカ2 U.S.A.2


米国市場の基礎知識(5)

オプション

オプションは先物と並ぶ代表的なデリバティブ(金融派生商品)で、株式や債券を原資産にするものを金融先物・オプションと呼ぶ。アメリカの代表的な金融デリバティブはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のS&P500、Nasdaq100先物・オプションだが、アメリカの証券会社で売買されているオプションは先物市場で取引されている金融デリバティブとは異なり、アメリカン証券取引所AMEXに上場されている。

株式市場であるAMEXの先物市場であるCMEの金融デリバティブの違いを簡単に説明する。

(1)AMEXは個別株オプションがあるが、CMEはインデックスのみ。
(2)CMEでは先物とオプションが売買されているが、AMEXはオプションのみ。
(3)CMEはアメリカの主要インデックスが中心だが、AMEXはETFのオプションがあり選択肢が広い。
(4)S&P500、Nasdaq100の両主力商品はCMEの売買高が大きい。

CMEは先物とオプションを組み合わせて売買するプロ、セミプロの投資家が、AMEXは現物株のヘッジや信用取引のかわりにオプションを利用する個人投資家が中心になる。

AMEXに上場されているオプションはホームページから確認できる。

■売買銘柄と取引基準

S&P500銘柄のほとんどが個別株オプションの対象になっているが、売買はマイクロソフト(MSFT)など人気銘柄に偏っている。

インデックス・オプションは27本が上場されているが、継続的に売買が行なわれているのはNasdaq 100 Index (NDX)とMin Nasdaq 100 Index(MNX)の2種類。ETFオプションは約100本が上場されているが、ここでも売買はSPDRS(SPY)とNasdaq-100 Index Tracking Stock(QQQQ)に集中しており、それ以外ではiShares Russell 2000(IWM)とiShares S&P 100 Index Fund(OEF)が目立つくらい。

アメリカの証券会社でオプション取引をする場合は、預け入れ資産の額や投資経験によって取引範囲が決められる。オプションの買いやヘッジは初心者でも可能だが、売りポジションを持つためにはそれなりの投資金額と投資経験が要求される。とくにアメリカ非居住者の場合、追証の取立てが困難なためハードルはより高くなる。


■取引概要

1)倍率

個別株オプションは1単位100株、インデックスオプションは原則、指数×100倍。

たとえば、NASDAQ100指数を原資産とするETF(上場投信)「QQQQ(NASDAQ 100 INDEX TRACKING)」の株価が40ドルとすると、オプション1単位は4,000ドル分(40ドル×100)の原資産を売買することになる。このとき、Strike Price(権利行使価格)40ドルのコールオプションの価格Premiumが5ドルとすると、1単位を購入するのに必要な額は「500ドル(5ドル×100)+手数料」となる。

これに対して、NASDAQ100指数が1,700ポイントとすると、インデックスオプション「NDX」の1単位は17万ドル分(1,700ポイント×100)の原資産を売買することになる。このとき、Strike Price(権利行使価格)1,700ポイントのコールオプションの価格Premiumが50ドルとすると、1単位を購入するのに必要な額は「5,000ドル(50ドル×100)+手数料」となる。

NDXの売買単位を10分の1にしたミニナスダック「MNX」は、指数×10倍を1単位として売買することになる。

2)限月

AMEXの上場オプションの限月(満期日)は毎月第三金曜日翌日の土曜日(第三金曜日が祝日の場合は、その直前の営業日)。限月の設定は銘柄によって異なる。

3)権利行使

AMEXの個別株オプションはアメリカンタイプで、いつでも権利行使可能。インデックスオプションはヨーロピアンタイプで、権利行使できるのは満期日のみ。

4)権利行使価格とプレミアムの刻み

権利行使価格Straike Priceの刻みは1ドル、プレミアム(オプション価格)の刻みは10セント単位。

■取引方法

オプションの注文方法をE*TRADEを例に説明する(他社もほとんど同じ)

1)Select Options Order

Trade画面で選択できる注文方法は以下の3つ。

・Basic(標準):個別のオプションを売買する標準的な注文方法。

・Complex-Spread(合成オプション):2種類のオプションの売買注文を同時に出すときに利用する方法。

・Comprex-Buy/Writes(原資産+オプション):原資産である個別株とオプションの売買注文を同時に出すときに利用する方法。

2)Order Type

選択できるOrder Typeは以下の4つ。

・Buy Open:オプションの買い
・Sell Open:オプションの売り
・Buy Close:売りポジションの解消
・Sell Close:買いポジションの解消
*オプションの場合、同一銘柄を買いと売りの両方のポジションで持つこともできるので、ポジションを解消する場合は、「Buy Close」「Sell Close」を使う。

3)Price Type

Basicで選択できるPrice Typeは以下の4つ。

・Market:成行
・Limit:指値
・Stop:ストップロス注文(成行)
・Stop Limit:ストップロス注文(指値)

4)Price Type2

  Complex-Spread、Comprex-Buy/Writesで選択できるPrice Typeは以下の4つ。

・Market:成行
・Net Debit:買い越し
・Net Credit:売り越し
・Even:ゼロコスト

5)Term

選択できるTerm(期間)は以下の4つ。

・Good for Day:本日限り有効
・Good Until Canseled*:キャンセルするまで有効
・Immidiate or Canseled:約定した分以外はキャンセル
・Fill or Kill*:全部約定しなければキャンセル
*はBasicのみ。

■合成オプションの注文方法

合成オプション(原資産+オプションも同じ)をつくる場合は、戦略によって初期費用が@Net Debit買い越し、ANet Credit売り越し、BEvenゼロコストになる場合が考えられる。そこで、個々のオプション(株式)の売買価格を指定するのではなく、両者の合計費用を指定することで指値として使うことができる。

〈ケース1〉

QQQQのコールオプションを、スタライクプライス40ドルで買い、42ドルで売るブル・スプレッドの戦略を採用したとする。このとき、40ドルのコールオプションのAsk Priceが5ドル、42ドルのコールオプションのBid Priceが1ドルとすれば、Market Order(成行注文)では、この2つのオプションは差し引き4ドルで購入できることになる(5ドル‐1ドル)。

このとき、40ドルのコールオプションを4.5ドルで買うか、42ドルのコールオプションを1.5ドルで売りたいと考えたとすると、「Net Debit」を3.5ドルに指定すればいい。「4.5ドル‐1ドル=3.5ドル」「5ドル‐1.5ドル=3.5ドル」のいずれかの場合に取引が約定する。

〈ケース2〉

QQQQのコールオプションとプットオプションをストライクプライス40ドルで売るショート・ストラドルの戦略を採用したとする。このとき、40ドルのコールオプションのAsk Priceが4.5ドル、プットオプションのAsk Priceが5ドルとすれば、Market Orderでは、この取引によって合わせて9.5ドルのプレミアムが入ってくることになる(5ドル+4.5ドル)。

このとき、コールオプションを5ドルで売るか、プットオプションを5.5ドルで売るかして、プレミアムの合計額を10ドルにしたいと考えたとすると、「Net Credit」を10ドルに指定すればいい。「5ドル+5ドル=10ドル」「4.5ドル+5.5ドル=10ドル」のいずれかの場合に取引が約定する。

<ケース3>

QQQQのコールオプションをスタライクプライス40ドルで買い、翌月のコールオプションを41ドルで売る限月間取引の戦略を採用したとする。このとき、40ドルのコールオプションのAsk Priceが5ドル、41ドルのコールオプションのBid Priceが4.5ドルとすれば、Market Order(成行注文)では、この2つのオプションは差し引き0.5ドルで購入できることになる(5ドル‐4.5ドル)。

このとき、40ドルのコールオプションを4.5ドルで買うか、41ドルのコールオプションを5ドルで売りたいと考えたとすると、「Even」を指定すればいい。「4.5ドル‐4.5ドル=0ドル」「5ドル‐5ドル=05ドル」のいずれかでコストゼロになった場合に取引が約定する。


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