小富豪のための香港金融案内FAQ


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オフショア金融センターとしての香港

Q1 香港はタックスヘイヴンですか?

Q2 金融所得に対する香港の税制はどのようなものですか?  

Q3 香港の金融機関を使った預金や株式・債券投資の税金はどうなるのでしょうか? 

Q4 香港の所得税・法人税はどのようになっていますか?

Q5 香港に法人を設立した場合、税金はどうなりますか?  

Q6 香港の金融機関を利用した場合、日本の税務当局が資産内容を知ることはできますか?  

Q7 海外送金や日本円の持出しに制限はありますか?  


Q1 香港はタックスヘイヴンですか?

A タックスヘイヴン(租税回避地)の定義は多様ですが、少なくともOECD(経済開発協力機構)が作成した「タックスヘイヴン・リスト」には香港は含まれていません。

 1998年にOECDが公表した「タックスヘイヴンの判定基準」によれば、タックスヘイヴンとは「金融・サービス等の活動から生じる所得に対して無税もしくは名目的課税」であり、なおかつ

1.他国の納税者に関して有効な情報交換を行なっていないこと。

2.税制を含む法制度について透明性が欠如していること。

3.誘致される金融・サービス等の活動について、実質的な活動が行なわれることが要求されていないこと。

のいずれかに該当する国や地域とされています。香港は預貯金の利子や株式・債券の配当および売却益などの金融所得を非課税としており、タックスヘイヴンの必要条件を満たしますが、上記の十分条件を備えてはいないということです。

 一方、日本国は「タックスヘイヴン税制」によって国際的な租税回避行為を規制しており、その際、タックスヘイヴンの定義を「法人税率25%以下の国や地域」としています。香港の法人税率は16%なので、日本の税法に従えば香港はタックスヘイヴンと見なされることになります。

 ただし、タックスヘイヴン税制は法人の租税回避行為を対象としており、個人が香港の金融機関を利用したり、株式や債券を売買する場合は同法の対象とはなりません。 

 【OECDにおいてタックスヘイヴンと認定された国や地域】

アンドラ公国 アンギラ アンティグア・バーブーダ アルバ バハマ国
バハレーン国 バルバドス ベリーズ 英領ヴァージン諸島 ドミニカ国
クック諸島 ジブラルタル グレナダ ガーンジー サーク
オルダニー マン島 ジャージー リベリア国 リヒテンシュタイン公国
モルディヴ共和国 マーシャル共和国 モナコ公国 モンセラット ナウル共和国
オランダ領アンティル ニウエ パナマ共和国 サモア独立国 セイシェル共和国
セント・ルシア セント・クリストファー・ネイヴィース セント・ブンセントおよびグレナディーン諸島 トンガ王国 タークス諸島・カイコク諸島
米領バージン諸島 ヴァヌアツ共和国      

(下記6カ国は、タックスヘイヴンの判定基準は満たすものの、2005年までに有害税制を除去することを約束したためリストからは除外された)

バーミューダ諸島 ケイマン諸島 サンマリノ共和国 マルタ共和国
キプロス共和国 モーリシャス共和国    

 またOECDは、2002年4月にアンドラ、リベリア、リヒテンシュタイン、マーシャル諸島、モナコ、ナウル、ヴァヌアツの7ヵ国を「非協力的タックスヘイヴン」として公表したが、後にヴァヌアツが除外された。 

 Q2 金融所得に対する香港の税制はどのようなものですか?  

A アジアを代表する金融センター・香港は、ライバルであるシンガポールとの競争から誕生しました。

 世界の基軸通貨となったドルが海外に滞留し始めまたのは1960年代からです。冷戦によってアメリカ国内の資産が凍結されることを恐れた旧ソ連政府が大量のドルを海外に持ち出したのが始まりと言われています。

 アメリカ国内に還流せず、海外の金融機関に預けられたままになっているドルは「ユーロダラー」と呼ばれます。こうしたドル資金がスイスなどの金融機関に預けられ、ロンドン市場で取引されるようになったからです。

 ユーロダラーのうち、アジアの金融機関に預けられたドル資金を「アジアダラー」とも呼びます。このアジアダラーすなわち華僑マネーを積極的に取り込むことで金融ビジネスを拡大しようと最初に試みたのシンガポールでした。シンガポールは真っ先に非居住者の利子・配当課税などを全廃するなど、オフショア市場を整備しました。

 香港は当初、こうした流れに完全に乗り遅れました。銀行預金には一律15%の源泉徴収課税が課されていたため、海外からの投資資金は軒並みシンガポールに奪われてしまったのです。

 香港政府が重い腰を上げ、外貨建て預金金利に対する15%の源泉徴収課税を廃止したのは1982年のことでした。しかしその後の展開は急で、翌83年10月には香港ドル建て預金に対する10%の源泉徴収課税が廃止され、89年までには居住者・非居住者と問わず、利子課税のほか、配当課税やキャピタルゲイン課税などが完全に廃止されました。

 オフショアとは、国内金融市場(オンショア)から遮断された、非居住者(海外投資家)に対する特権的な金融市場を言います。しかし香港では、オフショア、オンショアの区別なく金融所得に課税されていないことから、「香港はオフショアではない」と主張する専門家もいます。

 もっとも、私たちにとってこうした定義はさほど重要なものではありません。すべての金融所得に非課税の特典が与えられている以上、私たちから見ればタックスヘイヴンと実質的に同じだからです。

 Q3 香港の金融機関を使った預金や株式・債券投資の税金はどうなるのでしょうか? 

 A 香港では居住者・非居住者を問わずすべての金融所得が非課税ですから、あなたが香港居住者(日本の非居住者)であれば合法的に非課税メリットを享受できます。日本の居住者であれば、海外での金融所得は国内所得と合算されて課税されることになります。

 日本の非居住者として認定されるためには、たんに香港に居住するだけでなく、香港内で職を得たり、日本に居所(自宅)を有しない、家族を残さないなど、厳しい条件をクリアしなければなりません。

 海外投資の税金については『タックスヘイヴン入門』を参照してください。

Q4 香港の所得税・法人税はどのようになっていますか?

A  香港の所得税率は15%、法人税率は16%と非常に低率です。しかも課税対象となるのは国内取引から得た所得だけで、海外取引から得た所得は非課税であり、そのうえ外国為替管理や資本取引規制なども存在しません。これが、世界中の金融機関や事業会社が競って香港に進出し、香港島のビジネス街に「100万ドルの夜景」で知られる巨大なオフィスビル群を誕生させた理由です。

 香港法人は会計監査や税務申告が義務づけられていることから、維持コストの安い英領ヴァージン諸島(BVI)での法人設立も広く行なわれています。こうした法人設立は小規模な会計事務所などが行なっており、日本円10万円程度でオフショア法人と法人名義の銀行口座を開設してくれます(同時多発テロ以降、ペーパーカンパニーの口座開設は難しくなってきています)。

Q5 香港に法人を設立した場合、税金はどうなりますか?  

A 法人税率16%の香港はタックスヘイヴン税制の適用対象なので、株式の5%以上を保有している場合、その法人の得た所得は原則として国内所得と合算して課税されることになります。タックスヘイヴン税制の適用を避けるには、海外法人の株式の50%以上を日本の非居住者(個人・法人)が保有するか、すべての株主の持株比率を5%未満(株主26人以上)にする必要があります。

 なお、仮にタックスヘイヴン税制の対象国であっても、現地で社員を雇用し、工場や事務所を設け、事業を展開していれば適用除外となる場合もあります。事業を行なっているかどうかは実態に即して判断されるため、たんに形式を整えただけでは認められません。

Q6 香港の金融機関を利用した場合、日本の税務当局が資産内容を知ることはできますか?  

A 日本と香港は租税条約を締結していないため、日本の税務当局が香港政府や香港の金融機関に対し、日本人顧客の資産や取引内容の照会を行なう公式なルートは存在しません。  

Q7 海外送金や日本円の持出しに制限はありますか?  

A 1998年の“金融ビッグバン”によって海外送金や日本円の持出しに対する規制は撤廃されました。現在では、海外にいくら送金しようと自由です。

 ただし、1回200万円を超える海外への送金および海外からの入金は、その事務を取り扱った金融機関の支店(営業所)から、その支店の所轄の税務署に告知書を提出する義務が課せられています。

 また外為法により、一人当たり100万円相当額を超える現金(外国通貨を含む)、小切手(トラベラーズチェックを含む)、約束手形、有価証券および重量1キログラムを超える金地金(純度90%以上)の持出しは税関への届出が必要とされています。

 詳しくは『タックスヘイヴン入門』を参照してください。


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