Shoji KIMURA
木村昭二氏インタビュー

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木村昭二(きむら・しょうじ)
ハンドル名「Kimsho」。慶応義塾大学卒業後、大手金融機関、シンクタンク等で金融関連業務を幅広く経験。現在はPT研究家として調査・研究業務に従事。著書には「税金を払わない終身旅行者」総合法令出版などがある。

――木村さんは『税金を払わない終身旅行者』という衝撃的な本を書かれて、はじめてPT(PermanentTraveler)の存在を日本に知らしめたわけですが、そもそもオフショアの研究を志したのいつ頃からなんですか?

木村 私のオフショア研究のきっかけは大学生の時にさかのぼります。ちょうど、私が大学生の時(1980年代後半)は、日本の大手金融機関や商社などが積極的にオフショアセンターを利用していた頃でした。チャネルアイランドのガーンジー島やカリブ海のケイマン、バハマ、バミューダなどを日本企業が利用していたのです。
 学生の時は勉強しないで遊んでばかりいたのですが、就職活動の時にリクルート関係の企業案内の雑誌(電話帳みたいに分厚いやつ)を読んでいて、そこに日本企業のオフショア利用のことが書いてありました。そこで初めて、オフショアの存在を知ったんです。
 それ以降、「税金が一切かからない」というところになぜか“ロマン”を感じ(笑)、自分なりに外国の書物を買って読んだり、直接、海外に手紙を書いたりして細々と研究をしていました。当時はインターネットなどありませんでしたし、家庭用のFAXも普及していませんでしたから、いちいち相手に手紙を書かなきゃいけないんです。パソコンも高価で持っていなかったので、タイプを打ってがちゃがちゃ手紙を書いてましたね。
 もちろん当時は、日本国内では、今みたいにオフショアについて書いてある本などほとんどありませんでした。あったとしても国税庁の人が書いたなにやらさっぱりわからない(笑)難しい国際税務の本でしたね。いまだったら「ゴミ投資家シリーズ」っていうすばらしい参考書(笑)がありますけど……。
 本がないから、必然的に、自分で動かないとわからなかったんです。そうこうしてるうちに、オフショアの世界にのめり込んでいったんですね(笑)。

――これまで、どのようなオフショアをリサーチされましたか?

木村 いろいろです。郵便やFAXでのやりとりを含めると、アンドラ、オーストリア、チャネルアイランド、マン島、マルタ、ジブラルタル、マデイラ、カンピオーネ、スイス、リヒテンシュタイン、ルクセンブルグ、イタリア、イングーシ、ベリーズ、ケイマン、バミューダ、パナマ、香港、シンガポール、北マリアナ連邦、バヌアツ、ナウル、ニューカレドニア、モーリシャスぐらいでしょうか。


バヌアツ共和国 首都 ポートビラ上空
――いちばん面白かったのはどこですか?

木村 もちろんそれぞれどこも魅力的なんですが、あえてひとつあげれば、南太平洋のバヌアツ共和国でしょうかね。ここにはじめていった時は、いたく感動しました。こんなピュアーで、海がきれいな国があるのかって。
 しかし、一見、のんびりした南の島なんですが、街の中心部には会計事務所や弁護士事務所が並んでたんです。会計事務所なんか、世界的に有名なビッグ4もあるんですよ。
 本当はここでダイビングの免許を取ろうかなという軽い気持ちで行ったんですが、現地に着いてオフショア事情に感動し、急遽予定を変更して現地調査になったんです。やっぱり、見ると聞くとでは大違いですね(笑)。


ポートビラ市街 オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)
――調査っていうのは、具体的にはどうやるんですか?

木村 まあ、この時は調査のための事前準備なんて当然にしていませんから、いきあたりばったりでかたっぱしからオフィスに飛び込むわけです。アポなし取材の電波少年[海外版]ですよ(笑)。銀行、信託会社、会計事務所、弁護士事務所、不動産会社、現地登記所……ほんと手当たり次第にオフィスに行って話を聞いてたんです。
 でもこの国の人は親切で、私の超下手な英語にもいやな顔せずにオフショア事情を教えてくれました。
 あと「電波少年」だと、スイスの中にあるイタリア領飛び地のカンピオーネに行った時もそうでしたね、この時も飛び込みで現地のプライベートバンクにいったんです。カンピオーネについて全くわからなかったので、「教えてくれ」というノリで。この時も親切でしたね。何事も恐れずにチャレンジですかね。


カンピオーネ 中央に見えるカジノはカンピオーネ公営カジノ
――最近はオフショアに関するニュースもずいぶん入るようになってきた一方で、マネーロンダリングに代表されるようなネガティヴなイメージもあるようですが。

木村 オフショアというと、何か怪し気で、不法に手に入れた資金を隠すといったイメージが強いようですが、最近ではそのような非合法なマネーを受け入れるオフショアはなくなってきています。
 このあいだもあるオフショアを訪ねて、そこで現地の政府の方と話をする機会があったのですが、マネーロンダリングに関してはむしろ日本よりも厳しい監視体制をとっている印象を受けました。
 ちなみにこのオフショア国は、IMF(国際通貨基金)とBIS(国際決済銀行)による「金融安定化フォーラム」が発表した報告(2000年5月25日)によると第三群に分類されていましたが。

註:「第1群」は「金融取引に応じて法制度や監督体制が比較的充実している」地域で、香港、ルクセンブルク、シンガポール、スイス、ダブリン、ガーンジー島、マン島、ジャージー島の8地域、「第2群」は「体制整備が第1群に比べて劣る」地域で、アンドラ公国、バーレーン、バルバドス、バミューダ諸島、ジブラルタル、ラブアン島、マカオ、マルタ、モナコ公国の9地域、それ以外は「体制が不備で国際金融の安定に潜在的な影響を及ぼす懸念がある」第3群に分類されている。


カンピオーネ対岸 スイス ルガーノの金融街。右の建物はクレディ・スイス
 ちょっと昔までは確かに怪しい資金が入っていたこともありますが、最近ではオフショアといえどもそのような資金を入れないように気をつけていますね。今後はずっと健全になっていくんじゃないでしょうか。
 ただ先進国からすると、税金が著しく低いオフショアセンター自体が不健全だという意見もありますが(笑)。
 最近では元国税庁の幹部で某上場企業の副社長だった人がオフショアを利用して巨額の脱税を行なったことがクローズアップされていますが、日本ではこのような報道だけで「オフショア=脱税」というステレオタイプのイメージがつくられていくのは残念です。オフショアを生かすも殺すも、私たち投資家のモラル次第なのかもしれません。

――日本と欧米の個人投資家を見ると、オフショア利用の点で、どんな違いがありますか?

木村 日本人はオフショアに対して非常に保守的です。一方で欧米人は、チャレンジングにオフショアを利用しています。
 日本人の場合は前述のように、こそこそと脱税するというスタンスの人がまだまだいますが、欧米人は堂々と合法的に節税するというスタンスですね。このへんは日本人は、仕事や居住の関係で、なかなか非居住者になって合法的節税をすることができないという事情もあるのかもしれません。
 日本人の場合、98年4月の外為法改正でやっと自由に海外口座を利用することができるようになったばかりですから、まだまだオフショアの利用については勉強と経験が必要でしょうね。 ――「オフショアを利用するならPTになるべきだ」というのが『税金を払わない終身旅行者』の基本的な主張だと思いますが、そのお考えはまだ変わっていませんか?

木村 そうですね。基本的にはその考え方は変わっていません。日本の居住者で合法的にオフショアを利用するには必ず限界があるからです。ただ、PTのメリットについては節税ということもありますが、それよりも世界観が広がることが大きいと思います。
 節税の部分については今年(2000年)の4月から海外財産の相続・贈与に関しては、非居住者になって行なう節税メリットがなくなってしまいました。もちろん所得税についてのメリットはまだ有効ですが……。
 ですから、あまり節税のことばかり考えずに、PTというライフスタイルによってリスクの国際分散ができるというメリットを主体に考えるべきではないでしょうか。例えば、世界的に見て、日本の不動産価格の水準はまだまだ高いです。ですから、一生をかけてローンを組んでそのような割高なものを買わないで、安くて税金のかからないところに不動産を購入して住むことも考えられますね。
 あと、PTは「移住」ではなく、ある程度の期間で日本と海外を往来しますから、高齢になって海外生活に支障が出始めてきたら、本国の日本に戻ってくることもできます。自分のペースでライフスタイルを変えることができるわけです。

――PTのデメリットというのは何ですか?

木村 子供の教育問題や、身内の扶養などに支障を来たすことでしょうか。後は、少し理屈っぽくなりますが、国際法上の「外交的保護権」を受けることに対して不利になる可能性も考えられます。このあたりは私自身、さらに研究が必要なんですが、要はある個人が海外でその身体・財産に被害を被ったとき、被害者の国籍国が加害者側の国家に対し請求を行なうことができるわけですが、その権利行使がうまく働くかどうかということです。

 この権利が行使されるためには一定の要件を満たす必要があるのですが、形式的・便宜的な国籍を有する場合、国家は被害を受けた個人の保護を主張できないということのようです。PTとして国を転々とし、各国のいいところをとる限りは、いずれの国とも密接な関係を持たないとみなされる可能性もあり得るということです。

――そうしたメリット・デメリットを含め、PTを目指す人たちに何かひとことお願いします。

木村 PTにはメリットやデメリットがいろいろとありますから、人それぞれ向き不向きがあると思われます。ですから、「私はこれからPTになるんだ」と意気込んでやるのではなく、何年間もいろんな国を訪れて、自分に合った国や自分に合ったライフスタイルを見つけ出せばいいんじゃないかと思います。
 後で「こんなはずじゃなかった」というのではなく、あせらずマイペースで自分のライフスタイルを探し求めるということでしょうか。ちなみに私も、そんなスタイルを模索中です。

――人気のあった掲示板(会員サイトに設置されたPT掲示板)の管理を一時お休みして、あらたな調査・研究を開始されるということですね。これまで本当にありがとうございました。みんながびっくりするような成果を期待しています。

木村 ええ。みなさんの期待に添えるように頑張ります(笑)。

(2000年6月)


「海外投資を楽しむ会」会員の皆様へ

 昨年の7月から誠に僭越ながらこちらのPT掲示板でホスト役を務めさせていただきましたが、この度、一身上の都合でしばらくホスト役をお休みすることとなりました。

 お休みの理由は、単刀直入にいうと充電期間ということです。PT研究家としてまだまだ調査・研究することは山ほどありまして、インプットの部分が不足していると思い始めていたところでした。

 そこで、ここで思い切ってお休みして、調査・研究に戻ろうと思っている次第です。短い間でしたが、AICの会員の方々からはご熱心な質問や情報提供をいただきいたく感謝しております。

 PT掲示板を始める際のあいさつの中でも書きましたが、若輩者で研究途上の身分でホストの資格があったかどうかはいまだに自信がありませんが、そのような身分ゆえに今回の充電のためのお休みに関してお許しをいただければと思っております。

 最後に、皆様が既存の金融機関に依存しないオルタナティブな精神で自らの人生をクリエイトできることを祈っております。

木村 昭二


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