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“アジアのオフショア”シンガポールの基礎知識
シンガポールは香港と並ぶアジアの代表的なオフショア金融センターですが、これまで個人投資家向けの情報は多くありませんでした。ここでは、シンガポールの金融事情について、簡単に説明しておきたいと思います。
■シンガポールの銀行
同じイギリスの旧植民地でも、シンガポールの銀行は香港よりもすこし敷居が高いのが特徴です。さすがにジャケット・ネクタイ着用とまではいいませんが、いまでも半ズボンやサンダル履きの顧客は入店を拒まれる場合があります。
銀行は大きく国内系、外資系に分かれ、私たち日本の個人投資家の場合、国内系三大銀行(DBS、UOB、OCBC)と、外資系のHSBC、シティバンク、スタンダード・チャータード銀行が、銀行口座を開設する際の選択肢となるでしょう。
このうち、国内系と外資系では口座開設基準がすこし異なります。
国内系銀行では、外国人の場合、口座開設にはシンガポール内の住所と居住ビザが必要で、旅行者が口座を開くことは原則としてできません。ただしこれには例外があって、その銀行に1年以上口座を保有している顧客の照会状があれば、旅行者でも口座開設を認めてくれます(*)。
*本書でDBSを紹介しているのは、私たちがDBSに1年以上口座を保有しており、口座開設を希望する会員の方に照会状を発行できるからです。詳細は「海外投資を楽しむ会」の会員サイトをご覧ください。
一方、HSBCなど外資系銀行は、照会状がなくても旅行者の口座開設に対応してくれます。ただしこれは例外的な措置なので、シンガポールに銀行口座が必要な正当な理由がなければなりません(**)。後述のように、Citibankシンガポールは、非居住者向けのIPB(International Personal Banking)部門に口座開設することになります。
**「シンガポールの証券会社で投資を行ないたいので国内に銀行口座が必要です」などと答えておけば大丈夫です。
1) シンガポールの国内系銀行
国内系銀行のなかでは、“三大銀行”と呼ばれるDBS、UOB、OCBCが取引シェアのほとんどを占めています。
1)DBS(星展銀行) Development Bank of Singapore
前身は政府系のシンガポール開発銀行で、民営化後、郵便貯金のPOSB(Post Office Savings Bank)を合併し、東南アジア最大、世界でも有数の金融グループとなった。現在も、大株主はシンガポール政府。シンガポール最大の証券会社DBS Vickersは子会社。
2)UOB(大華銀行) United Overseas Bank
民間銀行としてはシンガポール最大。ラッフルズ・プレイスに聳えるUOBタワーはシンガポール金融街の象徴。
3)OCBC(華僑銀行) Overseas Chinese Banking Cooperation
UOBに次いで民間銀行第2位。シンガポールをはじめ、東南アジア各地でビジネスを行なう華僑を主な顧客とする。
2) シンガポールの外資系銀行
外資系銀行のうち、HSBCとスタンダード・チャータード銀行はローカルと同じ口座が開設できますが、Citibankシンガポールは、非居住者向けのIPB口座になります。
1)HSBCシンガポール HSBC Singapore
HSBCグループのシンガポール拠点。旅行者でも比較的容易に口座開設してくれるが、この銀行にはメリットとデメリットがある。メリットとしては、口座開設申請書を入手できれば、日本から郵送で口座開設できること(***)。デメリットは、自宅に送られてきたカードをアクティベイトするためにシンガポール内のHSBCでATMを利用する必要があること。カードをアクティベイトしないとインターネットバンキングが使えないため、使いこなすには最低でも1回、窓口で口座開設した場合は2回、シンガポールに行かなければならない。
***郵送での口座開設には、東京・八重洲にあるHSBC日本支店でパスポートとサインの認証が必要。HSBCシンガポールは海外からの郵送での口座開設に熱心とはいえないので、口座開設申請書を送ってもらえるかどうかは運次第。
2)スタンダード・チャータード銀行シンガポール Standard Chartered Bank Singapore
上記の問題を回避したい場合は、スタンダード・チャータードを試してみたい。通常の普通・当座口座のほかに、ATMカードが発行されないが最低預金額がなく、金利も高いe$aver(イーセイバー)口座も。詳細は各自で確認のこと。
3)シティバンク・シンガポール Citibank Singapore
シティバンク・シンガポールの場合、非居住者は自動的にIPB口座を開設することになる。IPB口座はローカル口座に比べて最低預金額が高く(普通預金口座でUS$5,000もしくはS$5,000)、送金手数料なども割高だが、日本語を話す担当者が付く。以前は日本から郵送での口座開設も受け付けていたが、現在はサービスを休止中(****)。口座開設にはシンガポールのIPBオフィスを訪ねる必要がある。詳細は各自で確認のこと。
****郵送での口座開設には居住地国のシティバンクのバンクリファレンス(銀行照会状)が必要だが、シティバンクを含む日本の金融機関はバンクリファレンスを発行しないので、現実的に郵送で口座開設することは不可能となった。
シンガポールの場合、香港とちがって銀行業務と証券業務は分離されており、銀行で投資信託(オフショアファンド)を買うことはできますが、株式の売買はできません。また、シンガポールドル普通・当座預金口座と外貨預金口座が一体となった総合口座もありません。シンガポールの銀行口座は、次に説明するPOEMSのような証券会社の口座と併用することで効果を発揮します。
証券口座との間の資金のやり取りを考えると、外資系銀行よりも、シンガポール内の無料送金システム(GIRO・EPS・Bill Payment)を利用できる国内系銀行のほうが利便性は勝ります。どうせシンガポールに行くのであれば、照会状を入手して、DBS、UOB、OCBCのいずれかに口座開設することを検討されるといいでしょう。
■シンガポールの証券会社
シンガポールは香港に比べても人口が少なく、証券会社もファンドや機関投資家など大口投資家向けのサービスが中心で、個人投資家にグローバルなオンラインサービスを提供する会社はそれほど多くありません。
そのなかで総合金融グループ、フィリップ・キャピタルPhillip Capitalは、傘下のフィリップ証券、フィリップ・フューチャーズで世界の個人投資家に多様な金融サービスを提供しています。SGX(シンガポール取引所)に上場されている株式・先物商品だけでなく、アメリカ、イギリス、日本、香港、タイ、マレーシアなど複数のマーケットにオンラインでアクセスできるなど、その先進性はシンガポールでは群を抜いており、日本の個人投資家にとっても第一選択肢になることは間違いないでしょう。本書では、フィリップ証券での株式取引、フィリップ・フューチャーズでの日経225先物・オプション取引を中心にその活用方法を紹介しています。
フィリップ証券、フィリップ・フューチャーズともに、弁護士によるパスポートとサインの認証があれば、日本から郵送で口座開設することが可能です。シンガポールの銀行口座と組み合わせれば、手数料無料で資金を移動できるなど利便性は向上しますが、証券・先物口座だけでも充分に利用価値はあるでしょう。
銀行口座の開設は原則として窓口で行なうことになるため、どうせシンガポールを訪れるのであれば、銀行口座・証券口座(+先物口座)をまとめて開いておくと便利です。郵送で先に証券・先物口座を開設した場合は、シンガポールを訪れた際に銀行口座とリンクさせておくといいでしょう。
シンガポールは東南アジア旅行のハブ(中継点)として頻繁に利用されており、金融機関はラッフルズ・プレイス周辺の金融街に集まっているので、半日もあれば銀行・証券(先物)会社をすべて回れます。次の旅行の機会を活用して、シンガポールの金融サービスを体験してみてはいかがですか。