小富豪のためのタックスヘイヴン入門


[目次]

 

Introduction

誰でも「海外投資」を楽しめる時代がやってきた!

 2003年を迎えても、日本では金融システムの動揺が続いています。銀行は実質国有化され、生命保険会社も深刻な経営危機に陥っています。山一證券、北海道拓殖銀行、長期信用銀行が相次いで破綻してからすでに5年。不良債権問題はいまだ日本経済に暗い影を落としています。

大手金融機関の破綻で、日本人の間に疑心暗鬼が広がっています。銀行を信用せず、現金を自宅の金庫に保管する人も増えてきました。しかしひとたび目を海外に転じれば、まったく違う風景が見えてきます。

 タックスヘイヴンTax Havenという言葉を直訳すると「租税回避地」となりますが、“税金天国Tax Heaven”の誤訳のほうがしっくりきます。なぜならそこは、所得税・法人税・譲渡税(キャピタルゲイン課税)・利子配当課税(インカムゲイン課税)・相続税・贈与税などが存在しないか、あるいはきわめて低率の、マネーのパラダイスだからです。
 こうした税金天国は、現在、世界で100カ所近く存在するとされ、「オフショア金融センターOffshore Financial Center」の名で呼ばれています。
 タックスヘイヴン(オフショア)はビジネスや資産運用において、個人や法人に非常に有利な機会を提供しますから、世界中からマネーが流れ込み、銀行・保険会社・ファンド運用会社など多くの金融機関が競ってサービスを提供しています。
 私たち日本人にとって、タックスヘイヴンは、長い間、人気コミック『ゴルゴ13』や映画『007ジェームズ・ボンド』でしか見たことのないフィクション(お伽噺)の世界でした。そこは、何十億円、何百億円もの資産を持つ大金持ちしか足を踏み入れることのできない禁断の聖地だったのです。

「タックスヘイヴンの銀行ってどんなところだろう?」
 私たち「海外投資を楽しむ会」は、こんな疑問からスタートしました。
 1998年に外為法が改正され、日本人の海外投資が自由化されてからも、どうすれば海外の金融機関を利用できるかは誰も教えてくれませんでした。海外での資産運用といえばスイスのプライベートバンクのことで、1億円をぽんと預けることのできるお金持ちでなければ相手にされない、というのが当時の常識でした。専門家と称する人たちの間ですら、たいした資産もない一介のサラリーマンがタックへイヴンの銀行に口座を開くことなど、できるはずがないと信じられていたのです。
 そこで私たちは、調べられる限りのタックスヘイヴンの銀行にFAXを送り、口座開設について問合せてみました。すると驚いたことに、分厚い資料が続々とエアメールで送られてきたのです。
 その中には、「最低預金額Initial Deposit100万ドル(約1億2,000万円)以上」と明記されている敷居の高い銀行もありました。しかし一方で、5,000ドル(約60万円)〜1万ドル(約120万円)程度の資金で口座を開いてくれる銀行もかなりあることに気づきました。その中には、口座開設申請書Application Formとパスポートのコピーを郵送するだけで口座をつくれるところもありました。
 こうして私たちは、ヨーロッパの代表的なタックスヘイヴンのひとつであるチャンネル諸島Channel Islandsジャージー島Jersey Islandにあるケイターアレン銀行Cater Allen Bankに、日本人としてはじめて口座を開設することになりました。そこまでの経緯を描いたのが、98年4月に出版された『ゴミ投資家のためのビッグバン入門』(メディワークス刊)です。
それから5年を経て、ケイターアレンはイギリス6大銀行のひとつアビーナショナル銀行Abbey National Bankの100%子会社アビーナショナル・オフショア銀行Abbey National Offshore Bank(ANO)と名前を変え、現在では3,000名近い日本人顧客がこの銀行を利用しています。
 私たちが口座を開設した当時は、銀行との連絡は電話とFAX以外方法はありませんでした。現在は、送金指示や残高照会、関連口座の開設、住所変更など、たいていのことがインターネットバンキングでできるようになりました。辞書と首っ引きで英文FAXを送り、つたない英語で電話していたことが嘘のようです。
 この5年間で、海外投資をめぐる環境は大きく変わりました。
 最初は、ごく一部の好奇心旺盛な人たちが手探りで海外の金融機関を利用し始めました。海外投資“第一世代”の多くが留学経験や海外赴任の経験のあるビジネスマンで、外資系企業に勤務している人も多くいました。インターネットバンクやネット証券が登場すると、これにコンピュータのヘビーユーザーが加わりました。
 今では、留学を目指す学生や、リタイアして海外居住を考える人たちが積極的にオフショアの金融機関を利用するなど、その裾野は確実に拡がっています。誰もが気軽に海外銀行口座を持つ時代がやってくるのも遠い将来のことではないでしょう。

 金融機関は資産運用の道具に過ぎません。しかし、それを上手に使いこなすことによって、他人よりもほんの少し豊かな人生を手に入れることは十分可能です。
 国家からも、会社からも経済的に独立した“小富豪”になれば、自由な人生を手にすることができます。使い切れないほどのお金があっても、それだけで人生が楽しくなるわけではありません。資産をどのように活かすかは、あなた次第です。
 本書をきっかけに、海外投資を楽しむ仲間がひとりでも増えることを願っています。

海外投資を楽しむ会


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