小富豪のためのタックスヘイヴン入門


[目次]|[FAQ2]

 

FAQ1 海外投資のポイント

Q1 海外投資をしたいのですが、どうすればよいのですか?
Q2 海外の銀行に口座をつくると、どんなメリットがあるのでしょうか?
Q3 海外の銀行に口座があると、海外旅行の時にどんなメリットがあるのでしょうか?

Q4 海外の銀行に口座を持っていると、資産運用にどんなメリットがあるのでしょうか?
Q5 海外の金融機関を利用すれば、日本の銀行より安心なのでしょうか?
Q6 海外の金融機関を利用すれば、日本国が破産した時にどういうメリットがあるのでしょうか?
Q7 海外の金融機関を使うのに、英語は必要ないのでしょうか?
Q8 海外の金融機関を利用するには、多額の資金が必要ではないでしょうか?
Q9 海外の金融機関に資金を預けるのは危険ではないでしょうか?
Q10 海外投資には手間とコストがかかるのではないでしょうか?
Q11 海外の金融機関に口座を開設するのは難しいのでは?
Q12 海外の金融機関に口座を開設するには多額の手数料が必要では?


Q1 海外投資をしたいのですが、どうすればよいのですか?
A 海外投資には、ふたつの方法があります。
 ひとつは、国内の金融機関を通じて海外の金融商品を購入する方法で、外貨預金や海外ファンド、アメリカや中国の株式まで、近くの銀行や証券会社の支店を利用して簡単に海外市場に投資することができるようになりました。あなたがインターネットにアクセスできるのなら、選択の幅はもっと広がります。
 もうひとつの方法は、直接、海外の銀行や証券会社などに口座を開設する方法です。経済のグローバル化とインターネットの急速な普及で、今ではちょっとしたノウハウさえ知っていれば、誰もが気軽に海外の金融機関を利用することができます。
 本書は、ごくふつうの日本人が海外の銀行に口座を開設し、活用するためのノウハウをまとめたものです。
 したがって本書には、国内の金融機関を利用して海外投資を行なう方法は書いてありません。わからないことがあれば、それぞれの金融機関に電話して(日本語で!)聞けばいいだけだからです。
Q2 海外の銀行に口座をつくると、どんなメリットがあるのでしょうか?
A 海外の金融機関を利用する理由は人それぞれです。
 海外旅行の時に便利だから、という方もいるでしょう。留学や赴任、あるいは退職後に海外で暮らすための準備かもしれません。
 日本の銀行は格付が低くて信用できない、という人も最近は増えてきました。海外のマーケットに投資するなら、現地の金融機関を使ったほうが税金や手数料の面で有利だと合理的に考える人もいます。
 あるいは、あなたはやがて日本国が破産し、預金封鎖が実施されると思っているかもしれません。書店に行けば、日本経済の破滅を予言する本がずらりと並んでいます。
 私たちが海外の金融機関を利用するようになった理由は、それが面白そうだったからです。
Q3 海外の銀行に口座があると、海外旅行の時にどんなメリットがあるのでしょうか?
A あなたがバカンスでニューヨークに遊びに行くとしましょう。しかし、そのためにわざわざ銀行に行って、現金をトラベラーズチェックに交換するなどという面倒なことをする必要はもうありません。飛行機の搭乗券さえ持っていれば、財布の中身が空でも何の問題もありません。JFK空港に着いたら、オフショアバンクのドル建てのカードを出して、近くのATMから必要なドルを出金すればいいだけだからです。
 せっかくの海外旅行ですから、そのままちょっとヨーロッパまで足を延ばしてみたらどうでしょう。パリのドゴール空港に着いたら、財布からユーロ建てカードを出して、ユーロの現金を出金します。イギリスに行くのなら、ポンド建てのカードを使って、ヒースロー空港で現金をおろせばいいでしょう。
 旅行から帰ったら、翌日から急な香港出張を命じられました。そんな時は成田空港近くのホテルに一泊して、そのまま香港行きの航空便に乗り込みます。あなたが香港の銀行に口座を持っていれば、割高な両替所などに寄る必要もなく、空港内のATMで香港ドルを手に入れ、ビジネス・ミーティングに直行することができるのです。
 実際にはこんなスーパービジネスマンは少ないと思いますが、でも、ちょっとカッコいいとは思いませんか?
Q4 海外の銀行に口座を持っていると、資産運用にどんなメリットがあるのでしょうか?
A 海外の金融機関を活用すると、あなたの資産運用の幅を大きく広げることができます。
 たとえば香港の金融制度には銀行と証券の壁がありませんから、銀行口座を持っていれば、その口座で、外貨預金はもちろん、株式やファンド、金などに投資することができます。すべての資産が1枚のステイトメントにまとめられるので便利です(一部の金融機関では香港非居住者の株式投資が制限されています)。
 また、オフショアバンクをハブ(中継基地)にして、オフショア籍の金融商品に投資することもできます。投資資金をオフショアバンクの口座から送金したり、解約・売却したファンドの資金をオフショアバンクの口座に戻したりできれば、いちいち日本から資金を出し入れする必要はありません。こちらのほうが、手数料コストがずっと安くなります。
 資産運用におけるもうひとつのメリットは、税コストを合法的に軽減することが可能になることです。
 日本国内で銀行預金をすると、利子に20%の源泉徴収課税かかかります。ファンドを購入すると、解約差益に対して同じく20%が源泉徴収されます。こうした課税は、海外の金融機関を利用することによって、一定の範囲で適法に回避することができます。
Q5 海外の金融機関を利用すれば、日本の銀行より安心なのでしょうか?
A 銀行の信用力は、個別の銀行によって変わります。したがって、日本の銀行だから不安で、海外の銀行だから安心ということはありません。
 ご存知のように、日本の銀行に円預金をすると、定期預金は1,000万円まで、普通・当座預金は無制限に元金と利息の支払いを日本国政府が保証してくれます。このような保証は海外(外資系)の金融機関では受けられませんから、日本円で金融資産を保有するのなら、日本の銀行ないしは郵便貯金のほうが安心です。
しかし、2002年4月のペイオフ一部解禁によって、外貨預金からは一切の政府保証が外されました。あなたが外貨預金をしていた銀行が万一経営破綻してしまえば、金額にかかわらず元本が一律カットされます(日本においてはこれまで金融機関を対象にペイオフが実施されたことはありませんが、仮に経営破綻した北海道拓殖銀行に対しペイオフが行なわれたら、預金は一律3割カットされただろうという試算があります)。したがって、米ドルやユーロなど、日本円以外の通貨を資産として保有する場合は、その資産を預ける金融機関の信用力を厳しくチェックする必要があります。
一般に、金融機関の信用力は格付で判断されます。機関投資家(年金や投資信託・生命保険会社など)が投資適格とするのはBBB(トリプルB)格以上ですが、個人投資家の場合、金融機関の破綻による被害ははるかに大きくなりますから、A(シングルA)格か、できればAA(ダブルA)格以上が目安になるでしょう。
ところが日本の場合、大手銀行の中でもっとも格付の高い東京三菱銀行でもBBB+で、なかには投資不適格のBB(ダブルB)格まで落ちているところもあります。A格以上の金融機関を探そうとすれば、一部の地方銀行かネット専業銀行を選ぶしかありません。
それに対して海外の大手金融機関の中には、AA格やA格の銀行は数多くあります。世界経済はますます不安定になってきており、格付が高いからといって絶対安全とはいえませんが、機関投資家さえ寄り付かないBB格の銀行に外貨預金するよりはずっとマシなことは間違いありません。
Q6 海外の金融機関を利用すれば、日本国が破産した時にどういうメリットがあるのでしょうか?
A いくら日本の財政危機が深刻でも、日本国がそう簡単に国家破産すると思えません。しかし、万が一そうした事態が起きた場合には、国家は金融システムを維持し、海外への資産逃避(キャピタル・フライト)を防ぐために銀行預金を凍結することが考えられます(最近では、経済危機に陥ったアルゼンチンが預金封鎖を実施しました)。そうなると、円資産、外貨建て資産にかかわらず、外資系金融機関を含め、国内の預貯金には一定の引出し制限が課せられることになります。
 それに対して海外の金融機関は、日本国政府とは無関係に、それぞれの国や地域の法律によって運営されており、こうした預金封鎖の影響を受けることはありません。国外に置かれたあなたの資産は、国家破産のリスクから切り離されているのです。
Q7 海外の金融機関を使うのに、英語は必要ないのでしょうか?
A これはもちろん必要です。
ただし、今では大手金融機関はほとんどがインターネットに対応しているので、以前に比べて、英語で電話したり、英文の手紙やFAXを送ったりする必要は激減しました。入出金や残高照会、ファンドや株式の購入・売却など、ルーティーンの取引はネット上で完結するので、英語を使うことはありません。
さらに最近では、日本人顧客の増加にともなって、日本語に対応する海外の金融機関も出てきました。今後、日本人投資家の海外投資が本格化すれば、言葉の壁はさらに低くなっていくでしょう。
だからといって、英語をまったく話せないのに海外の金融機関を使いこなそうというのは無謀です。複雑な取引を行なうのでなければ、高度な英語力は必要ありません。自分の指示が正確に伝えられれば問題ありませんから、これを機会に、もういちど英語力を磨いてみてはいかがでしょうか?
Q8 海外の金融機関を利用するには、多額の資金が必要ではないでしょうか?
A スイスのプライベートバンクが一時期話題になったことから、口座を開設するには少なくとも100万ドル(約1億2,000万円)の資産が必要だと思っている人がいます。確かに顧客一人ひとりに担当者をつける以上、まとまった資金を預けてもらわなければ商売にはなりません。
しかし、リテール(小口)業務を行なう一般の銀行ならこんな資金は必要ありません。 口座を開設するための最低投資額は、オフショアの銀行で8,000ドル(約100万円)、香港の銀行で3,000ドル(約40万円)程度が目安です。
Q9海外の金融機関に資金を預けるのは危険ではないでしょうか?
A 絶対安全な投資というのはこの世に存在しません。投資とはそもそもリスク(危険)をとって、その見返りとしてリターン(利益)を得る行為だからです。もっとも安全なはずの日本国債や郵便貯金にも、厳密にいえばリスクはあります。日本国の財政が破綻し、「預かったお金は返せません」と言われてしまえばそれまでだからです。これが、国家のデフォルト(債務不履行)です。
 もちろん、リターンの期待できない無用なリスクをとる必要はありません。海外投資のメリット(リターン)とデメリット(リスク)を慎重に検討したうえで、利用する金融機関を選択するべきでしょう。
Q10 海外投資には手間とコストがかかるのではないでしょうか?
A 海外の金融機関を利用する際に必ず必要となるコストは、日本と海外の間の送金手数料です。日本の金融機関を利用し、支店窓口で入出金すればタダですから、これは海外投資の追加コストといえます。これがだいたい、1回の送金で2,000〜5,000円かかります。
 かつては海外に電話したりFAXを送ったりするコストがかかりましたが、今はインターネットでたいていの用が足りるうえに、インターネット電話の登場によって国際電話料金が大幅に下がったので、ほとんど気にする必要はなくなりました。
 それ以外に、英文の説明書を読んだり、英文の手紙を書いたり、あるいは英語で電話したり(めったに必要ありませんが)という手間がかかります。これをコストと見なすか、将来のために必要な経験と考えるかは人それぞれでしょう。
Q11 海外の金融機関に口座を開設するのは難しいのでは?
A これはまったくの誤解です。一部のプライベートバンクなどを除き、金融機関はどこもできるだけ多くの顧客を獲得したいと考えているので、口座開設に面倒な手続きは不要です。基本的には、申込書に必要事項を記入してサインし、身分確認書類(通常は認証されたパスポートのコピーと住所証明書類)といっしょに送るだけです。申込書は英文ですが、記入事項は日本の金融機関を利用する時とほぼ同じなので、基本的なことを知っていればとくに問題ありません。
これで、早ければ1週間、通常は2週間程度で口座が開設されます。
Q12 海外の金融機関に口座を開設するには多額の手数料が必要では?
A これも完全な誤解です。
 日本で、銀行や証券会社に口座を開くのに手数料を払う人はいません。同様に、海外の金融機関に口座を開くのにも特別な費用は必要ありません。
 ただし、メールオーダーで海外の金融機関に口座開設する際には、身分確認書類として第三者(弁護士など)が認証したパスポートのコピーが必要になります。知合いに認証資格者がいれば問題ありませんが、そうでない場合は認証料金(弁護士報酬規定で1人1万円)を支払って書類の作成を依頼することになります(自分で直接、パスポートの現物を持って金融機関の窓口まで行くのなら、こうした手続きは不要です)。


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